蜜柑

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「きれい……」あなたがそう口を零す。その言葉に上を見ると、そこには春のお花が彼女の言う通り綺麗に待っていた。「……えっと、こういうの、なんて言うんだっけ」ん〜と口元に手を当て唸り出すあなたに、私も揃って口元に手を当てる。「なにかな……」「なんだろう……」私の方が難易度高いと文句は言わない。こういう一緒に悩む時間も大好きだから。「……あっ!」思いついたように表情を輝かせ、あなたは口にする。口元に当てていた手は人差し指だけ上げて、後は握り込まれていた。「春爛漫、って言うんだ!」「……春爛漫?」「そう! こんな景色のこと、そう言った気がする!」ニコニコと、嬉しそうに笑んでいるあなたがそう言うのなら、きっとそうなのだろう。あなたは私の顔を覗き込むようにして顔を見上げ、そして笑った。「……これからも、この春爛漫の季節を、あなたと迎えられたら嬉しいな」……そんな嬉しい言葉を告げられてしまえば、返すべき言葉などたった一つだけだ。「……私もだよ」「……! へへっ」返事をすると彼女は一層嬉しそうに顔を綻ばせる。……そんなあなたの表情をこれからも見ていたい。その思いも込めながら、私も頬を緩ませていた。

3/28/2025, 12:03:29 AM