「彼女の願いを叶えてやれるのは」
「そんなに他の男があの子に話しかけるのが気に食わないなら、とっとと付き合えばいいのに」
教室の窓側の前の方を睨みつけている友人は「あいつとはそんなんじゃねーよ」と口をへの字に結ぶ。
そんなことを言いつつも、視線は俺とターゲットの間を行ったり来たり。誰がどう見てもあちらを気にしているだろう。
「お前、さっきどんな顔してたか自覚ないだろ。親の仇見るような目ぇしてたぞ」
指摘してやると、こちらに視線を向けたが、目以外の五感はすべてあちらに向いているのが丸わかりで、思わず笑ってしまった。
「な、なんだよ」
「いや、別に」
ふと視線を感じ、窓側の前の方に目を向ける。
友人の想い人が、困ったような縋るような目でこちらを見ていて「あぁ、そうか」と納得と安堵感に似たものを抱いた。
「あれ、困ってんじゃね?」
目の前の友人に教えてやる。
次の瞬間、音を立てて席を立った友人は、鼻息荒く彼らの方へ向かっていった。
好きな男に助けられた囚われの姫の笑顔を見て、やっぱりあいつじゃなきゃ、あの子を幸せにできない、あんな笑顔にはできない、と改めて思う。
ふたりの世界に入る彼らを見ながら頬杖をつく。
俺の想いが叶う望みはない。
あの子が幸せならいいんだ。
だから、早くあの子の願いを叶えてやってくれよ。お前にしか出来ないんだから。
「あーあ。早くくっついてくれねーかな」
────鋭い眼差し
10/16/2024, 12:51:20 AM