あの人に、会う日が近づいて
セーターを買ったんです。
少し、女性らしくて
少し、凝ったデザインで。
華美では無いけれど
ずっと、触っていたくなるような
暖かいセーターを。
編み込んだセーターのように
私たちは、絆を紡いできたと
思っていたんです。
けれど、会える日が指折り近づく頃
ふとした会話の中で
何かが、ほつれたんです。
本当は前々から分かっていた。
放ったままにしていた。
糸くずだと思い込もうとしていた。
けれど、その糸に指を絡めると
編み込んだもの全てが、形が
なくなるのがこわかったんです。
大事なものを失うのは
誰でも嫌でしょう?
けれど、好きではなくなったものが
いつまでも近くにあるのは
もっと、辛かった。見たくなかった。
紡いだ絆のほつれを引くと
流れるようにするすると
涙と共に、形を変えました。
ほつれた糸は
時折、きらきらと
思い出を光らせました。
【お題:セーター】
11/25/2024, 7:16:57 AM