お題「夢が醒める前に」
想像した事もない景色
感じたことの無い香り
「人間は僕だけ?」
街の真ん中で少年が1人立ち尽くしている
周りには人がいっぱいいる。
否。正確には人ではない生き物達がいっぱいいる
全身半透明なドロドロな人、前が光ってる人、全身トゲトゲの人。
「ここは、地球?」
コスプレしてる人の集まりかと思ったがどうやら違うようだ。
ここは色んなお店が並んででおり、見たこともない商品がたくさんある。
レストランのようなお店もあり、中からは少し嗅いだだけでも口の中が唾液でいっぱいになる。今まで嗅いだ事のない美味しそうな匂いがしてくる。
「ここは商店街かな?」
少年は香りに食欲をそそられたが
それよりもこの状況について疑問を持った
「ここってどこなんだろ、もしかして、夢?」
夢ならばとてもリアルな夢だと感心した
「にしても言葉が全く分からない、日本語ではないよなあ、英語でもない気がする」
周りにいる人達は何やら少年には理解できない言葉を発してるようだ
学校で英語の授業を習ってる記憶を辿ってみて、記憶と比べてみても周りの人の言語は英語とも全く違うものだと感じた
「でもみんな凄く楽しそう。これってお祭りかなんかかな?」
周りは知らない言葉が飛び交ってる中。
雑音は何やら音楽のような音も聞こえてくる。
何とも心が弾む曲なのだろうかと感心した。
やはり音楽は世界共通なようだ
「ねえ。こっちきて」
ふと聞き慣れた言葉が聞こえた。これは日本語?
目の前の人だかりの奥から手を振る少女の姿が見えた
少女は少年に駆け寄り、少年の手を握った
驚いた少年だったが
そんな事お構いなしに少女は少年を引っ張って人混みの中を走った
「えっと君は?」
少年の問いに少女の顔は一瞬曇ったが
少女は少年の手にぐっと力を込めて
「会いにきてくれてありがとう」
少年は意味が分からないと思ったが
少女の震える手を感じて、疑問を抱く事をやめた。
「あのトンネルから通ってここにきたんだよね?多分もうすぐ夢から醒めちゃう」
夢とは何のことだろう?
少年はここに来た時の記憶が無い
「夢って?ここって夢の中?」
「ううん。夢だけど夢じゃない。少なくとも私にとっては。」
意味深な事を言われたが少年には理解できない。
そして走っていると目の前に大きな壁が見えた。
「これは、木?」
少年は見上げながら呟いた
目の前の幅10メートルくらいの、大きすぎる木はまるで壁のようだ。
「ここに一緒に来たかった。願いが叶ってよかった。」
少女は1人呟いた
心なしか瞳も少し潤んでるように見えた
少年は黙ったまま少女を見つめる
瞬きをした瞬間
脳が覚醒した
少年は咳込みながら目を開ける
草木の生える地面の上で、座ってる少年は全てを理解した。
「僕も会えてよかった。」
完
3/21/2023, 7:30:20 AM