『七夕』 No.99
「あなたは何をお願いするの?」
それは、近所の夏祭りのことだった。
七夕にちなんで高々と掲げられた笹に、薄紅色の短冊を掛けていたら、となりの小さな女の子に聞かれたのだ。
だから、引っかけた短冊を小さな女の子のおでこまで下げて、
「志望校に受かりますように」という目標を、近くでみせてあげた。
女の子はたいそう喜んで、
「がんばってね」とだけいって、走り去った。
もう一度短冊をかけ直すと同時に気づいたが、勝手に見るのはなんだか申し訳ないから、見るのは避けた。
となりの、女の子の灰色の短冊を、みるのは。
私は笹に背を向け、友達の方に駆けていった。
下駄をカランコロンと鳴らして。
ちょうど後ろでは、女の子の短冊が爽やかに揺らいでいた。
─地球戦略が、我々の勝利にオワリマスヨウニ
7/7/2023, 11:48:07 AM