私はお昼時に出歩くのが好きだ。
お昼時には、風がその家の食卓の匂いを運んでくれる。
一つ一つの家の情景、その家に住む、作った人と食べる人。
そういうのが伝わるようで好きなんだ。
風は、いつも私に「知らない」を教えてくれる。
遠い遠い旅路を歩んできた風が、無学な私の世界を広げてくれる。
子供は風の子、なら風は親で先生なんだ。
ひとしきり街を歩き終わったあと、家に帰る。
私には、ああいう食卓がない。
母親は早くに他界。父はそれで気を病んで病棟へ入った。
今の私は、近所の方のご厚意と遠方にいるらしい親戚のお金で生き延びている。
食卓は私の憧れだ。
みんなで囲むのは、もう私の家じゃ難しい。
だから、せめてお父さん。
帰ってきたら、もし合うことができたなら。
教えてもらったあなたの大好物を沢山並べて、
あなたの笑顔を見れる食卓を作りたい。
みんなと同じように、風に食卓を運んでほしい。
なんて願うんだ。
3/6/2025, 10:23:21 AM