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「一輪のコスモス」

 秋の風に誘われて散歩に出ると、近所の公園にたくさんのコスモスが揺れていた。もうそんな季節なのかと思う。
 「君へのプレゼントだ。君の誕生日と同じ秋の花だし、可憐な君にぴったりだと思って。」
 そう照れながらあなたがコスモスのブーケをプレゼントしてくれたのはいつの秋だっただろうか。私は嬉しくて、でもせっかくくれたコスモスの花が枯れてしまうことが悲しくて、その中の一輪を本に挟んで押し花にした。その一輪のコスモスは今もあの時と同じ鮮やかなピンク色のままだ。
もう隣にあなたはいないのに。
 カバンから本を取り出す。ぱらぱらとめくり、最後のページに挟まるピンク色の花弁をそっと撫でた。
 天国にあるお花畑もこの公園のようにコスモスのお花畑ならいいなと思う。それならきっと、この一輪のコスモスを通じて、私とあなたは繋がっていられるから。

10/10/2025, 1:37:19 PM