不整脈

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蝉の声に包まれた午後、
私はひとり、止まった時計を見ていた。
日焼け止めの匂い、遠くの花火、
どれもが「君」を思い出させてしまうから。
あの夏、君はまっすぐな瞳で、
「また来年もここで」と笑った。
風鈴が揺れて、影が重なった縁側。
その記憶が、今も風に紛れて耳に届く。

8月の光は優しくて、残酷だ。
懐かしさに触れれば触れるほど、
君のいない現実が、ひりひりする。

それでも私は今年も
同じ道を歩いてしまう。
君が走った、白い道。
君が立っていた、青い空。

「8月、君に会いたい」
そんな言葉を胸にしまって、
蝉の声に耳を澄ませる。
君の気配が、また風に乗る気がして。

8/2/2025, 1:13:54 AM