しぎい

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半年に一度、大学時代の女友達数人で集まる。
ホームパーティとも呼べないが、それを気取ったものを開くのが恒例だった。
小規模だし、テレビで見るような豪華なものに比べれば劣る。でも懐かしい顔に久々に会えると思うと、それなりに心躍った。

人数分の取り皿を並べている最中、黒髪の彼女の手が目についた。
手の甲に、赤色が沈殿して淀み固まったような痕を見つけた。

「前から気になってたんだけど、手に……痣? あるよね。なんなの?」

大学在籍中には手のことを尋ねても、のらりくらりと交わされた。だからそのことについてはタブーなのかと思い、しばらく触れなかった。もういい加減時効だろう。

私が興味津々なのを知った彼女は、諦め半分、そしてなぜか愛おしむように手の甲を撫でながら、あっさりと答えた。

「ああ、これ。元カレに熱々のヤカン押し付けられてできた火傷」

和やかに進んでいた下準備の空気がぴたりと止まる。
恋人にヤカンで手を焼かれたという彼女の視線の先には、ちょうどキーキー悲鳴を上げ始めたヤカンがあった。

2/28/2025, 2:32:40 PM