浮遊レイ

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 天国と地獄と聞いたら人は何を想像するのだろう。鮮やかな水色に白い雲が浮かんだ青空の楽園、赤黒い血の匂いが漂い逃げることができない奈落の底、人々が思い浮かぶ天国と地獄はこんなイメージだろう。
 じゃあ、僕がいるこの世界は一体なんだろう?
 疑問に思った僕は辺りを見渡した。ここは見渡す限り何もなく、ただ純粋な灰色が僕を包んでいる。出入口も、絵本に出てくる様な天使も悪魔もいない。この世界は天国とも地獄とも捉えようがない無の空間であった。
 僕はついさっきこの世を去った。だからここは死後の世界のはずだ。
 誰も何もない、ただ僕一人の世界。
 僕は徳も罪も何一つ積んでいない。だからこの世界には灰色の無、しか存在しないのか。
 僕はその場に座り込み、存在しない空を仰ぎ見た。想像してた通りである、空はなく、変わりに灰色の霧がかかっていた。
 そういえば、死ぬ前の空色もこんな感じだったか。この空も僕と同じ気持ちなんだなと感じてたの今でも覚えている。

 ……あ、だからなのか…。僕がこの世界にいるのは。
 僕は唐突に、何故自分がこんな無の世界にいるのかを理解した。僕は“懺悔”をしに、ここに来たのだ。
 人は徳を積めば天国に、罪を犯せば地獄に行くとされる。僕の犯した「コレ」は罪にはならないらいしが、決して許されない行いでもあるらしい。
 懺悔と知って何を悔い改めることができる僕にはわからない。けど僕と同じ道を辿って欲しくないと強く願った。


 願う度に僕はあの光景を思い出す。灰色の空の下で、楽になることだけを願って灰色のコンクリートに身を投げたあの日の記憶を、




 題名 『天国にも地獄にも行けない少年』

5/27/2024, 2:21:46 PM