ホシツキ@フィクション

Open App

やあ、僕の名前はカーテン。

ご主人に買われて1度も洗濯されたことは無い。
それにご主人は窓よりも短い僕を買ったみたいだ。

僕の足元から光が入って、床の色が変わってしまっているよ。
それにご主人はタバコを吸うから真っ白だったはずの僕は少し茶ばんできた気がする。

それに僕の後ろにはレースカーテンちゃんがいるけど、ご主人は彼女を見たことがあまり無いみたいだ。
僕を開けることはあんまり無いからね。

だから僕はご主人をずっと見てる。
それにたまに来る女の人のこともね。

その女の人は僕を見ていつも怪訝な顔をするんだ。
僕のことを「汚い」と言うのはまだ我慢出来るけど

ご主人のことを「ガサツ」だの「不精者」
とか悪口を言うから嫌いだ。

それに最近は「カーテン買い替えよう」なんて言い出した。

やだよ。僕は汚されてもご主人が好きだ。


まだ僕がご主人の家に来る前、僕は“割引”
って書かれたワゴンに入っていたんだ。

あぁ、捨てられるのかな。どんな部屋にかけられるのか、見たかったな、知りたかったなって
ずうっと思ってた。

そんな時ご主人が来て僕を手に取るとスグにカゴに入れてくれたんだ。
僕はすごい嬉しかった。
安かったからって理由だけかもしれないけど、嬉しかった。

足元から光が入っちゃうのは僕にはどうしようも出来ないけど、ご主人を眩しさから守ることはできるよ!


――今日ご主人はあの女の人と出かけて行った。

誰もいない部屋を見渡す。カチカチと時計の針の音だけが響く部屋。
少しタバコ臭い部屋。
ここが僕の家。大好きなご主人の家。
隅々まで見渡す。


―――どれくらい経っただろう?
ご主人とあの女の人がたくさんの荷物を持って帰ってきた。

ご主人は手を伸ばし、僕を外す。

『洗ってくれるの?』

そんなわけ無かった。あの女の人が手に持ってるのは茶色のカーテンだ。

『……やっぱりか。』

朝あの女の人が窓の長さを測っていた。
なんとなく、察してたよ。


だからいつもよりたくさんこの部屋を見ていたんだ。
いつもよりしっかり時計の針の音を聞いていたんだ。

お別れだと、なんとなくだけど思ったから。


最後、唯一嬉しかったのはご主人が僕を丸めてくれたこと。
袋に入れられて、ご主人が僕をギュッて押してくれた。

つけてくれた時以来の触れ合い。

あぁ、嬉しいなあ。ご主人、買ってくれてありがとう!
この部屋も、ご主人も大好きだよ。


僕は、幸せだったよ。ありがとう!


【カーテン】~完~



♡︎400ありがとうございます(*´ω`*)
読んでくださるだけでも嬉しいのに、♡︎まで頂けて本当に嬉しいです。
これからもぼちぼち頑張ります。

10/11/2022, 2:10:03 PM