永遠なんて、ないけれど
人間って面白い
肘をついた腕で頬を支えると自然と首を傾げる形で上目遣いになった。
途端に目の前の男か顔中を真っ赤に染めて面白いほどに狼狽し始める。そのままアタフタと顔を逸らしては上を見上げて決死の表情でこちらの顔を見返してくる。
どうしたの?
そう問えばあまりにも可愛すぎて、なんて返してくる言葉になんだか面白くもないのにおかしくなった。
目の前のこの人は本当に素直で、良くも悪くも何もかも曝け出していてここまでだと生きづらいとか考えた事がないのかもしれない。その純粋さと愚かさにほんの少しの羨望を抱きながら肩肘をついた手を目の前の手に伸ばした。
ヒェ…と叫んで真っ赤に染まった顔が逆に白くなる。
ね?と笑いかけながら手を取るとそのまま握り返した。
白黒させていた目の前の顔がごくりと音を立てて生唾を飲む音が聞こえる。
そんなにも必死にならなくてもいいのに。
面白い程に顕著な変化を見せる目の前の男の震える手を握ると笑いかける。
『ねぇ、幸せ?』
私の顔、ちゃんと笑えているかしら。
『もう、死んじゃいそうなくらい!』
そこまで?
思わず笑ってしまったけれど。こちらの笑い声に彼は安堵したみたい。ぎゅっと握り返してくる汗ばんだ手をこちらも握り返しながら目を伏せた。
人は辛い時だけじゃなくて
幸せな時も死にたくなるんだって。
永遠になりたい、そう思うのだろうか。
終わる事で。
自分の笑顔がどんなふうになっているかわからないけど、それでも私は笑いかける。
笑いかける方法しかわからなかった。
『ねぇ、じゃあ死んじゃおうか』
ねぇ、私はちゃんと笑えている?
貴方の顔を見る事が出来ないの。
9/28/2025, 1:05:44 PM