かたいなか

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ソシャゲは旅のようなものと思う物書きです。
サ終まで、旅は続くのです。
得てしてその旅は、ガチャが多く、出費には個人差があり、だいたい爆死するのです。
と、いうハナシは置いといて、今回の旅のおはなしの、はじまり、はじまり。

最近最近のおはなしです。都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしており、
そのうち末っ子の子狐は、遊ぶのが大好き!
お気に入りの参拝者さんのズボンをよじ登ったり、
神社に仕事でやってくる不思議なハムスターを全力疾走で追いかけ回したり。

今週の子狐のトレンドとしては、都内の某杉林の奥の、妙な組織が所有する領事館にお邪魔して、
そこの魔改造自走式掃除機兼空気清浄機に乗って、あっちこっち、探検すること。
その日もコンコン子狐は、修行で覚えた狐の秘術で領事館敷地のロックも警備も全部すり抜けて、
そして、魔改造清浄掃除機の上に、ちょこん。
お座りするのでした。

魔改造掃除機のことを子狐は、うぃんうぃんさんと、呼んでおりました。

「うぃんうぃんさん、こんにちは」
魔改造掃除機は、「こっち」の世界とは違う世界の技術で魔改造されておって、
見覚えある円形自走式掃除機の上に、そこそこ高めの空気清浄機が合体して、くっついています。
「うぃんうぃんさん、今日は、なにやってるの」

「うぃんうぃんさん」は、うぃぃん、うぃぃん、
領事館をちょっと脱走して、新しい仲間の後ろをゆっくり、追尾する旅をしておりました。

普通の自走式草刈機に見えます。
特に改造されるでもなく、不思議な部分も無く、ジージャリジャリ、ジーガリガリ。
指定されたプログラムに従って、領事館に至る道路の数百メートル付近の下草を、刈っています。

うぃんうぃんさんは草刈り機を、うぃーん、
特に指示・指定されたワケでもないし、うぃんうぃんさん自身に心が有るでもないのに、
追尾する旅を、続けておったのでした。

「うぃんうぃんさんの、おともだち?」
コンコン子狐が聞きました。
うぃんうぃんさんは、答えません。
ただ自走式草刈機追走の旅を続けます。
「うぃんうぃんさんの、およめさん?」
コンコン子狐がまた、聞きました。
うぃんうぃんさんは、それでも答えません。
旅は続きます。旅は続くのです。
自走式草刈り機はプログラムに従って、草を刈り、道路整備のお仕事をしています。

コンコン子狐はうぃんうぃんさんが、何故草刈り機を追尾しているのか、理由を知りませんが、
それでもコンコン子狐は、うぃんうぃんさんが、明確な目的をもって旅を続けていると思いました。
子狐はその目的を、今日だけは尊重して、うぃんうぃんさんの旅に付き合うことにしたのでした。

それにしたって、立派な草刈り機です。
子狐は子狐なので、そこまでの観察眼を持ちませんが、うぃんうぃんさんが追尾していた草刈り機はすごく高価な草刈り機だったのです。
領事館の周囲にある杉林の中でも使える、小回りがきいて、なにより悪路に強い草刈り機です。

ジージャリジャリ、ジーガリガリ。
自走式草刈機はプログラムに従い、何の例外も無く、何の想定外もせず、
領事館に至る道の周囲を整備し続けました。
うぃんうぃん、うぃんうぃん。
魔改造清浄掃除機に心は無いハズですが、その自走式草刈機を自発的に追尾して、
草刈り機を監視する旅を続けました。
そしてそれは、双方のバッテリーが少なくなるまで、ずっとずっと、続いたのでした。

「うぃんうぃんさん、うぃんうぃんさん」
子狐は語りかけますが、うぃんうぃんさんは、機械です。なんにも、ちっとも答えません。
「うぃんうぃんさん、草かり、してほしくないの」
子狐はまた語りかけますが、うぃんうぃんさんはただただ、旅を続けます。

旅の結果がどうなったかは、お題から離れた物語なので、詳しくは語りません。
ただ最終的に子狐は、自走式草刈り機に飛び乗って、狐の秘術でイタズラして、草刈り機をポン!
黒焦げにしてしまいましたとさ。

10/1/2025, 4:32:15 AM