どこへも行かないで
暗い路地裏。
子どもたちの秘密基地。
段ボールにガムテーム、格好良い木の枝と
ちょっと奮発して買ったリボンやらシールやら。
幼稚な作りですぐに壊れてしまうように見えるそれらは、
案外長生きしていることがある。
何故なら、子供達が居ない間に守るものどもが居るからだ。
寂しいもの、或いは気付かぬもの。
それらは健気に遊び場を守っている。
大雨、強風、風化から基地を逃し続ける。
いつまでも、永遠に一緒に遊び続ける為に。
しかし終わりは来る。
子供はいつまでも子供で居られない。
いつかは秘密基地から姿を消してしまう。
秘密基地のことも、友達のことも忘れてしまう。
あれらはそれをよくわかっている。
いつしか献花がなくなったように。
自分の死を悲しむ声が少なくなっていくように。
自分たちが置いていかれる存在であることをよくわかっている。
だから認めれない。
寂しい、寂しい、寂しい、寂しい。
どうして来なくなったの。
どうしておいていったの。
友達じゃなかったの。
そして、自覚しないうちに大きくなった子供達を
引き摺りこんでしまう。
自分たちの家。
大きな大きな暗がりの中。
あの日の秘密基地へと。
だからあちら側へ行ってはならない。
あれらいつだって手薬煉引いてあなたが来るのを待っている。
6/22/2025, 3:20:39 PM