わをん

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『空が泣く』

小さな町の悪党の親分はあるとき小さなこどもが震える手で握り締めたナイフに刺され、それでぽっくりと旅立ってしまった。こどもの父親は長い間金を巻き上げられた挙げ句に病気で死んだというから自業自得ではあるのだろう。けれど親分にこどもの時分に拾われた俺や、人知れず孤児院に寄付を続けていたことを知る人たちは大いに悲しんだ。
親分の葬式に人が集まらなかったのは、親分がいなくなったあとの悪党たちが長い間目の上のたんこぶだったものがきれいサッパリ無くなった喜びで酒盛りをしているのもあるが、単純には世間様に嫌われていたからだろう。それでも大きな棺が小さなこどもたちの手で花に飾られるさまはその場にいた人の心の慰めになった。
墓場へと向かう葬列にぽつりぽつりと雨が滴ってくる。親分の泣くところはついぞ見たことがなかったけれど、それは今このときなのかもしれなかった。

9/17/2024, 3:40:05 AM