雨降る朝と、始業前の職場で書類等々を配達する配膳ロボット、もとい、配達ロボットのおはなし。
最近最近、「ここ」ではないどこか、別の世界で、
「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織が、
あんなこと、こんなこと、それぞれの世界の独立性や独自性のための仕事をしておって、
総務部ならば、たとえば総合案内課、
関係整備部ならば、難民支援課に空間管理課、
法務部であれば執行課の実動班、等々、等々。
様々な部署、様々な部門が存在しておりました。
その部署間・部門間の書類や伝票、現金等貴重品を管理局員の代わりに運んでくれるのが、
ベラbげほげほ、もとい、超個体的な連携を可能としている黒塗りの機械生物。
管理局はビジネスネーム制を採用しており、それぞれの部署ごとにそれぞれの種類の動物の名前を、本名の代わりに用いるルールでしたので、
経理部所属のルールにならい、配達黒塗りロボットたちは、「クロネコ」と名付けられていました。
え?「一歩前」なのか「どいてにゃ」なのか不明?
細かいことを気にしてはなりません。
さて。
機械生物クロネコは、元々、過剰な開発競争によって自滅した世界から拾われてきた、生き残り。
拾ってもらった恩として、管理局の局員となり、
人間や獣人、宇宙タコや魔法生物の仲間と一緒に、
せっせこ、せっせこ。働いています。
物資運搬を目的として故郷の世界で開発されたクロネコの、管理局での仕事も、物資運搬。
特に、管理局の始業時刻前に、前日預かった伝票だの書類だのを各方面、お届け先の部門・部署に配達するのは、とっても大事な仕事です。
機械生物クロネコの早朝勤務部隊は、この大事な仕事を優先的に成し遂げられるように、
始業時刻3時間前に職場に来て、3時間みっちり働いて、3時間ですべてを配達してしまって、
それから後は、ずっと、ずーっと、休憩時間で居ることを、許されておったのでした。
そして、その日の早朝も、勿論始業時刻3時間前から、機械生物クロネコの早朝部隊が、
10台20台、いえ30台40台、
管理局の窓を雨が叩くのも気にせず、あっちの書類をこっちの部署へ、こっちの物をそっちの部門へ。
それはそれは忙しく、稼働しておりました。
「急げにゃ!急ぐのにゃ!」
「急ぐにゃ!お届けにゃー!」
「おいおまえ、その荷物を持ってってやるから、ボクのコレとトレードするにゃ!」
「お、おなか、へって、動けな……にゃあ」
雨と君と君、雨とクロネコとクロネコ。
配達用機械生物が縦横無尽。
雨と君と君、雨とクロネコとクロネコ。
管理局の外で降る雨の中を、
防水タイプのクロネコが3匹、もとい3機ほど、
小型のジェットエンジンで、移動しています。
きっと、難民シェルターから難民支援課へのお手紙か何かを運んでおるのでしょう。
「着艦!着艦にゃー!」
「お前は艦じゃないにゃ」
「発 艦 にゃ!」
「だから。艦じゃないにゃ。カッコつけてるヒマがあったら仕事しろにゃ」
「だれ……か、ごはん、ちょーだい……にゃ」
雨と君と君、雨とクロネコとクロネコ。
あっちで機械生物、こっちで機械生物。
前日の管理局員の仕事が、今日の管理局員の部署に、ちゃんと届くように、ちゃんと渡るように。
配達ロボットのクロネコ、早朝勤務部隊は、3時間かけて全部の仕事を、完璧に、毎日、成し遂げておったのでした。
「ところで、勤務内容に追加が入るって噂にゃ」
「聞いたにゃ。書類や物品の他に、購買部に頼んだ備品や日用品も届けてほしい、って噂にゃ」
「ご……はん……」
「日用品配達してほしいなら、待遇改善と俺達のバージョンアップ、しろにゃ!」
「そーだそーだ!俺達はクロネコであって、アマーゾンでもネーコーイーツでもないにゃあ!」
「【エネルギー残量が5%になりました】」
にゃーにゃー、にゃーにゃー。
管理局の早朝は猫の大配達会。
皆みんな、早朝勤務部隊は一生懸命、働いておったとさ。 おしまい、おしまい。
9/8/2025, 9:07:16 AM