ストック1

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友人の作品が展示されるというので、とある展覧会に来た
芸術みたいなのは、僕はよくわからない
けど、展示されていた作品は僕でも超力作なんだろうとわかるものだった
見ていてなんとなく心地いい
そんな作品

友人の作品を楽しんで、他の展示も見ていこうと周っていると、ひとつの作品に目がいった
タイトルは逆光
正面を向いた人の姿が黒く塗りつぶされていて、後ろには光が差している
なるほど、逆光だな

「この作品が気になりますか?」

関係者らしきスーツを着た人が近づいてきた

「あ、はい
なんとなくですけど」

「この作品は、作者の人類への絶望を表しているんですよ」

なんだか重そうな作品だな
ちょっと面白いなと思っただけなんだけど

「作者は人類に心底絶望しているらしく、それを表現して伝えたかったそうです」

うーん、人類への絶望をみんなに伝えたかった、か

「でも、絶望してるならそもそも絶望した相手にアピールする意味あります?」

「私もそう思います
人類への未練たらたらじゃないかと
そもそも作者も人類ですからね」

自分だけ特別だと思ってるのかな?
他の人類とは違ってわかってる側だぞ、と

「なんか、そう聞くと残念というか、痛い感じがしちゃいますね」

「痛いですねぇ」

そんなふうにうなずき合っていると、ヒゲを蓄えた中年男性が笑顔で近づいてきた
なんだ?

「私の作品を好き放題言ってくれるじゃないかこの野郎!」

作者だった
怒ったような口調だけどなんか嬉しそうだな

「この人、喜んでいるのでご安心を」

関係者の人が僕に耳打ちする
まあ、怒っているようには全然見えない
なんで喜んでいるかはわからないけど

「この作品はね、人類への絶望を表しつつも、後ろから光が差している
ひとつの方向だけ見ず、振り向きさえすれば希望が見えるのだということを、自分に言い聞かせている
そんな意味もある絵なんだよ」

あー、そう聞くとなんだか自分の中の葛藤も表現した深い作品って感じがするな

「というのは建前で
そういうテーマを持たせたら深そうに見えて面白いんじゃないかと思ってノリで描いただけだ
私は別に人類に絶望してないからね
むしろ大好きだ
特に私の作品に目がいった君なんか最高!
私の作品の要は深いと見せかけた軽さとくだらなさだ!」

ものすごく軽い作品だった
でもそういうのも面白いかもしれない

「この人はなにか伝えたいとかではなく、本当に軽い気持ちで作品を製作して、それが評価されてしまう人なんですよ」

メッセージや深いテーマを持つ作品よりも、そういう作品のほうが僕の好みなのかもしれない
僕は説明を聞いてこの逆光にすごく惹かれた

「ま、もし逆光を気に入ったなら、私の他の作品もネットで調べてくれるとありがたいね
他の実物の展示は……そのうちどこかで何かやるだろ」

「今の所予定はありませんが、そのうちやるつもりではあります」

「うん、よろしく頼むよ
じゃ、私はこれで失礼するよ」

上機嫌で去っていった
作品も人柄も、面白い人だったな

「では、私も失礼します」

「あ、はい
ありがとうございました」

友人の作品を見に来たけど、思わぬ出会いがあったな
せっかくだし、ちゃんと調べてみようと思った
さて、僕はもう少し他の作品も楽しむとしよう
他にもいい出会いがあるかもしれない

1/25/2026, 1:15:17 AM