イオリ

Open App

太陽

 絵が下手だった。子どもの頃は、写生の時間が本当に苦痛だった。何を書いても、自分が見ているものと、描いた絵が違いすぎてうんざり。

 でも、唯一自信を持って描いたのは、太陽だ。赤々とまん丸に。まさに日の丸。気分が乗っていたら、その周りに放射状の光を足したりもした。

 そもそも、太陽を赤で描くのは日本ぐらいらしい。アメリカなどはオレンジ、北欧あたりだと白っぽく描かれるらしいが、その理由が面白い。

 簡単に言えば、緯度の違いらしい。低い緯度の場合、太陽との距離が近いので、赤い光が多く、逆に緯度が高いと、距離が遠くなるので青い光が多くなる。高ければ高い程、白っぽく見えるのはそのためだ。

 太陽はその圧倒的存在感ゆえ、誰もが根元的な生命力を感じるもの。しかしながら、
太陽は誰にとっても同じ太陽、というわけではなさそうだ。

 ──てなことを考えながら、ひまわりに水をやる。

 なぁ、ひまわり。お前は赤々の太陽と白っぽい太陽、どっちがいい?やっぱり赤だよな。

 ひまわりは僕には答えず、ただひたすら太陽を見ていた。


 

8/6/2024, 12:43:11 PM