「そういうの、いらないよ」
わたくしがあなたの額に手を当てようとするよりも早くあなたは私の手を抑える。体温を確かめようとしたのに、防がれてしまったみたい。
体調が悪いのではないの? ずっとぼーっとしていたから、てっきり熱があるのかと思ったのに。
考えをそのまま伝えると、あなたは深くため息を吐いて「だからそれがいらないんだ」と再び拒絶した。
「私に世話焼いたって意味が無いんだ。心配なんていらない、やめてくれ。」
あぁ、彼女のかわいらしいかんばせに影が落ちてしまった。わたくしはいつだってあなたの笑顔が見たいのに。
きっと、また何かをその純粋な心で真摯に受け止めて、咀嚼して、傷を負ってしまったのだろう。わたくしのようにあなたも、恵まれすぎたおうちに生まれたから。わたくしたちの目の前に転がされる優しさは噛めば甘いが、棘がある。
だから、教えてあげなきゃ。わたくしがあなたにあげる気持ちは甘いだけで、棘なんて無いって。
本当のわたくしよりもずっと無垢で純粋で呑気で可憐な、あなたの心の中にいるわたくしのヴェールを纏って、甘いそれを投げ入れた。
「まあ、意味があるかどうかはわたくしが決めるのよ。わたくしがお世話を焼いてあなたが身体を大事にしてくれるなら、いくらでも心配してあげる。」
「そういう意味じゃ……いや、もういいよ。」
「なら中に入って、暖かい飲み物を頂きましょう。ここは冷えるわ。」
やさしくしないで
2/3/2025, 10:40:24 AM