ピリピリとした空気が漂う。今にも心臓が口から飛び出そうな程である。君が私を庇う瞬間に向けたあの表情を忘れることができずに。私は自分の心拍数を数えながら、「大丈夫。大丈夫」とただひたすらに唱えることしか出来なかった。
君の未来がかかっているこの瞬間はきっと、私の人生の中1番、時の流れを遅くした。赤いランプが消え、先生がやってきた。「先生ッ!あの子は、彼はどうなりましたか、?」
私は彼の親御さんより先に先生に駆け寄って質問を投げかけていた。どんどん心拍数が上がって呼吸が浅くなる。
眠っている君の横顔は、なんて美しいんだろう。
まるで天使のような。そう、君は天使になってしまったのかな。地上にはもう二度と舞い降りることのない天使に。
私はまた心拍数を数える。「大丈夫。大丈夫。私のせいじゃない、」
君は学校中の人気者。
そして、私は日陰者。
でも、そんな私にも君はみんなと同じように接してくれた。それがとても嬉しかった事を覚えている。夏の廊下は蒸し暑く、誰も教室から出ようとしないのに、君はわざわざ私の教室まで来ては、にこりと笑って手招きをしてくれていた。
ただ、そんな私を良く思う人などいるわけがなく、いつしか私はイジメられるようになった。それは耐えれた。何故か。君が私の事を必要としてくれているかのように、毎日迎えに来てくれていたから。
そんな考えが甘かった。どんどんエスカレートしていくイジメ。笑い者にされ、貶され、惨めな思いばっかりするようになった。それでも君は、私の変化に気づかず、傍にいた。
「ねぇ、アンタさ、王子の前で階段から転げ落ちてよ。そしたらイジメ無くしたげる。」
主犯格の子がそう、私に提案してきた時、すぐに受け入れた。だって、私の変化にも気づかずに、ずっといるやつなんて迷惑でしかないのだから。
頭から血を流す彼。
「大丈夫、大丈夫。私のせいじゃない。私のせいじゃない。」
1/30/2026, 5:55:25 PM