えし

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一輪の花
まだ真新しいあなたの墓。数週間前まで話していた。
共通の友達と話す時も話題に出ていたのに、すっかり話題に出なくなってしまった。知らせが入っ
た直後は二六時十泣いていた。
こうして墓を前にしてもあなたともう二度と話せないということが腑に落ちない。
今でもあなたが息を吹き返して、天真爛漫な笑顔を見せてくれるんじゃないかと思ってしまう。そ
んなことあるわけないのに。たくさんのお供物と色とりどりの花が、私に追い打ちをかける。胸が
つかえて、辛うじて抑えていた涙が溢れそうになる。誰が来るかわからないし、はやく離れない
と。
いつだったか、あなたがくれた一輪の花。暑い夏に一際輝く白い花。花の名前も教えず行ってし
まったけど。調べたらすぐにわかった。サギソウ。鷺に似た、凛とした花。花言葉を調べて満更で
もない思いだったのはここだけの秘密。
一輪だけだと寂しいかなと思ったけど、もう花瓶に刺せないからちょうどよかったかも。あの時伝
えられなかった思いをスカビオサに込めて。
さようなら、大好きだった人。

2/25/2025, 10:31:23 AM