つぶて

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暮れなずむ夕陽を背に自転車を漕いでいた。
横に並ぶ友達はみんなチラチラと後ろを振り返ってはニヤついている。

「あいつら、遠慮してんな」
「ホントホント」
「なぁ、二人だけにしてやろうぜ。ちょっとコンビニでも行くか」
「それがいいな」

友達はコンビニに寄る旨を伝える。
戸惑いながら顔を見合わせる二人。結局、ついてくることはなかった。

僕は黙ってみんなに従って道を逸れる。ひどく喉が渇いていたから、味のない水を買った。

値上げしたとかしないとかで友達が盛り上がっている。
その輪に加わらないと不自然な気がして、無理に表情を作る。けれど、僕の網膜には話題に花を咲かせる二人の姿が焦げついている。

先日付き合ったことは本人から聞いた。あいつはいいやつで、僕は二人が上手くいけばいいと思っている。思って、いる。今も。たぶん。だって、友達だから。

6/4/2023, 9:59:23 AM