(同性愛ですいちお)
「止まないねぇ」
「…そうだね」
適当に相槌を打ちながら、ずっと止まなければいいのに、とか思っている俺がいた。
「あ〜、傘持ってくればよかった。傘ない時に限って土砂降りなの、なんなの」
窓の外を見てうなだれるきみに、はい、とタオルを渡して、風邪引くよ、なんて下心を隠したこころのうら。
ありがとぉ、とのらりくらりとタオルを受け取るも、きみはもたもたしていたもんだから、つい、
「わっ」
「ちゃんと拭かないと。あと濡れたままじゃ気持ち悪いでしょ。俺の服貸すからそれ脱いで」
ばさっと被せたタオル。
触れた手は冷たくて冷たくて、なんだか苦しくなった。
「…ち、ちかいんですけど…」
「え、あっ、ごめん」
絞り出すような声に慌てて、ぱっと手を離す。
やってしまった。やっちゃった。
「あはは、あまりにも冷たくてびっくりしちゃった」
つらい、くるしい。やめたい。
貼り付けた笑みがこんなにも恨めしい。
そう簡単には、いざという時に剥がせなくなってしまった仮面の笑顔がこんなにも俺の首を真綿で絞めつける。
…と。
気づいた時にはまた落っこちる。
目線を向けた先にいた。
「…こっちがびっくりしたよぉ…」
「……え…」
「み、見ないでっ」
「…真っ赤」
「っ、言葉にしなくていいぃ!」
冷たい手の甲で口もとを覆うのは精一杯の抵抗なのか。
これはどんな感染症よりも恐ろしい伝染病。
使い捨ての仮面の笑顔がぱりぱりと音を立てた。
火照った顔のふたり、脈を吐く心臓のまま、虹を探すように窓から土砂降りの空を見上げる。
君と見た虹 #186
(やばい…カフェインと頭痛薬ないと動けない身体になってしまった。せっかくひとつ終わらせたのに、まともに頭が働かない。休みたいのに休めない)
2/22/2025, 12:22:43 PM