オレンジ色に染まった森の中を歩く。その横顔を盗み見る瞬間が何より幸せなんだ。近くて、遠くて、触れると壊れてしまいそうな絶妙な距離感。もどかしくて、苦しい。もういっそのこと全部ぶちまけてしまいたい。迷惑だろうと構わない。この胸の内をあなたに曝け出したい。頭の中の悪魔が今日も囁いてくる。
でも、あなたの答えはもうわかってるから。
「最近涼しくなってきたよね」
「そうだね」
こんな無難な会話しかできない。こんなに近くにいるのに。出会ってからもう半年も経った。あなたは何にも気づいてくれない。それか気づいてても無視してる。
そんなあなたが憎らしくて堪らない。
冬になったら、凍えるような世界に一人で放り出すくせに。どうして私はあなたのものになれないのだろう。
少し冷たい風が吹いた。私は行き場のない右手を、そっとポケットに仕舞い込んだ。
9/21/2024, 9:21:59 PM