秋晴れ
「こういう透明すぎる秋の空を、昔は異常透明って呼んだんだ。今は言わない。異常という言葉のイメージが悪くなったのかもな。異常ってなんだろうな」と、先生は言った。
先生はもういない。異常能力者狩りに捕まりそうになったぼくたちをかばって死んだ。
気持ちのよい秋晴れの日だから外に出て、でも見つかったらヤバいから、ぼくはぼくの前後の光を交換する。前後から見た場合ぼくは光学迷彩で見えにくくなるってわけ。ぼくの能力は光を任意に交換することだけど、完璧に透明になれるわけじゃない。
先生、ぼくたちは異常なんだろうか。100メートルを10秒で走ったら賞賛されるのに、5秒で走ったら異常者扱いだ。異常ってなんなんだろうか。
秋の異常透明の空は美しいが何も答えてくれない。
10/19/2024, 4:56:09 AM