INARI

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 その瞬間私の高校生活は終わった。
同じクラスになった時からいいなと思っていた。
まわりがふざけけてもちゃんと掃除をしているところとか、字がきれいなところとか、
意外と自分の意見をはっきり言えるところとか。
自分とどうにかなるなんて全く期待してないわけじゃないけど、自分から行動起こせるほど前向きな性格じゃないから、眺めているだけで毎日幸せだったんだ。本当に。
 午後のちょうど眠くなる時間、たまたま自習になって、教材の動画を見て感想を書くことになった。たいして面白い内容ではないその映像を見ながら、わたしはふと斜め前を見つめた。
真面目に紙面に向かいながら、でもちょっと眠そうにも見えて、白い夏服が窓から射す光に反射して綺麗だった。思わず紙のはしっこに、名前を書いてしまった。
 チャイムが鳴り、感想文を提出して我に返った時には遅かった。回収係であるクラス一口の軽い陽キャ男子は、その理性が働くことなくクラス中に言いふらした。
ざわざわとクラスが揺れた。
 公開処刑だとか、迷惑だと誰かが言い、くすくすと笑い声が聞こえ始めた時だった。
「何が面白かった?」
落ち着いてて芯の通った声がして、教室が静かになった。
「どこが、面白かった?」
自分に問われてるのだと気づいた陽キャ男子はもごもごと何かを言っている。
「寄ってたかって人のことを馬鹿にしたり笑ってるのは見ていて気持ちのいいものじゃないよ。」
「それに人の心を勝手に決めつけないでほしい。誰が迷惑だなんて言った?むしろ、」
うれしい、と口が動いた時には、さっきまで怒りに満ちていた顔は真っ赤になっていた。
 怒涛の展開に呆気にとられてるクラスの人達をちらりと見て、私の好きな人は恥ずかしそうに笑って言った。
「皆見てるし、場所変えて話そうよ。とりあえず、」

ここではないどこかへ。


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6/28/2024, 8:00:31 AM