#34 ただ、必死に走る私。何かから逃げるように。
「その何かは、遅刻する未来でしょうね」
「だな。んー、あとは若者特有の衝動とか?」
「持て余した体力と気持ちの表れね」
「他には何か思い付くかな」
「うーん…過去とか」
「ああ、たくさん走ったつもりで振り向いても、全然小さくなった気がしないもんな」
「本当にそうね」
「じゃあ、本当に誰かに追いかけられたことは?」
「鬼ごっこくらいよ。平穏な人生ね」
「今は、だろ?」
「うん、昔よりもずっと平凡な毎日になったよ」
「そうだな。話を戻すけど、この『私』は追い詰められてる状況ってことなんだよな」
「ように、って比喩表現使ってるから、何処かに向かっているか、精神的な意味なのかもしれないわね」
「確かに。それでさ、そんな時にこそ軽口叩いて何でもなさそうにしてるヤツってカッコいいと思うんだ」
「わかるよ。余裕があるっていうのかしらね」
「そう、余裕。設計でもさ、遊びがないとダメなんだよね。壊れやすくなる」
「人間関係も同じね。親子関係にもユーモアを持て、って本で読んだよ」
「逃げるために必死になっても、パニックにはならないようにしないとだな」
「そうね。逃げ道を判断できなきゃ困るもの」
5/31/2023, 12:13:35 AM