夢と現実の狭間で。
悲しみの色に染まる、悲しみの音を聞いた。
苦しさのうちにある、懊悩を知った。
彼は、ただ一人立っていた。
これは、素晴らしい出来事になると思った。
フラスコの中の、三角形の石は、フラスコ画のような深い色をたたえていた。
その色は、紫がかって茶色が、濃く底に残っているような、悲しみの色だった。
体から力が抜けていく。
弛緩する心は、時間を知らない。
夢の終わりはここにある。
現実の始まりではない。
現実は永遠に見なくていいものを。
それは、このままいけば、凝結してしまいそうな、悲しみのカケラだった。
悲しみのカケラは、三角形で、フレスコ画ような色をしていた。
べーセルという男は、それを見て笑った。
「あはは! あなたが探していたのはそれですか。少し、様子がおかしいですね」
カケラは、多層の結石になって、ピカピカ光りながら、フラスコの中で大きくなる。
ストックホルムの夏は暑かった。
ただ、この場にいる、男とべーセルの間には、ストックホルムの黒い夏が陽炎のように立ち上っていた。
12/4/2023, 10:14:07 AM