心の中の風景は
母と同居の4年間だ
私も老いて自分が母の立場だったらと日々リアルに甦って来る
自立が難しくなり頑張りにも限界がみえていた母を何年も説得して同居することのなったのが9年前の秋
2度と帰れないかもしれない故郷を離れて来たというのに引越し荷物はほんのわずかで
最小限の衣類と仏壇とテレビ
自宅の家具食器電気製品等一切合財近所の人にあげたと言う
その決断と行動力には舌を巻く
年老いてもその潔さは昔と変わらなかった母
30年ぶりに一緒に暮らしてみると母のことを何も知らない自分に唖然とした
おしゃべりは時間のムダという彼女相手になす術がない
ここには畑も広い庭もない
手っ取り早くテレビを一緒に見ればと
母にコントローラーを渡した
ほどなく日本縦断こころ旅がみたいと言ってきた
何それ?
火野正平さんが手紙の土地を自転車で旅する
田舎で見ていた好きな番組だと
これなら共通の話題ができると一緒に見始めた
旅人として手紙の差し出し人の思い出の場所へ行く 自転車旅の道中に見過ごされそうな景色のなかで人、生き物、食との出会いがある
感情を抑え淡々と手紙を読み上げ目的の地をさっぱりと後にする
素の俳優さんが演出なしにそこにいる感じ
よくあるテレビ的ではない旅番組だった
当時
同居の母に楽しんでもらおうと一方的な過剰サービス一色の自分と淡々とした母の反応
ねえなんとか言ってよ
口触りのいい反応が返ってこないことに勝手にイライラしていた毎日
こころ旅を思うに静止画的佇まいの母の好きは気の利いた言葉を無理に言わない正平さんだったのかもしれない
あれから10年
私は思いもよらず病人になりそのもどかしさから無意味な愚痴をこぼし周りを巻き込んでしまう
あーあ笑顔の素敵な楽しいおばあちゃんが理想だったのになあ…
一瞬あの世の母と目が合った気がした
8/29/2025, 11:02:34 PM