『あなたがいるだけでいい』
「本当に何も食べないの?」
目の前にいる彼女が不思議そうな顔をする。彼女の目の前にはみずみずしいフルーツが乗ったケーキとカフェオレ。対する俺の前にはコーヒーだけが置かれていた。
「うん、いいんだ。俺は何もいらない」
「貴方が来たいって言ったから来たのに…」
「変なの」と呟き、ケーキを口に入れる君。それまで訝しげに寄せられていた眉毛が、ケーキの美味しさに緩和されゆるりと解ける。彼女の顔は幸せ一色に染まっていた。
俺はコーヒーを飲みながらそんな彼女を眺める。美味しそうに食べる彼女を見るだけで胸が満たされていくような感じがした。
そうだ、俺はこの顔が見たかったんだ。
木漏れ日に包まれた空間で、2人だけな気がした。
【何もいらない】
4/20/2026, 4:14:48 PM