とさりと枝に残った冬の最後のカケラが落ちる音で、
巣穴で眠る子熊の兄弟の末っ子が目を覚まします。
「うぅん……誰だい僕を起こしたのは」
外を覗けばあたたかな日差しと鳥の声。
眠る前には沢山あった、
白くて冷たい雪はもうほとんどありません。
足を一歩踏み出せば、
小さな草が子熊の足先をくすぐりました。
「春だ!春が来たんだ!」
子熊は嬉しくなって駆け出しました。
「おぉい皆、春だ、春だよ!」
木の上から寝ぼけ眼のリスが顔を覗かせ、
足元で眠る植物達も目を覚まします。
「春だって?」
「本当だ、あたたかい。春が来たぞ」
「さあ顔を出せ、芽吹のときだ」
声を掛け合い、地上に手を伸ばす植物達。
もうじきお山はまた賑やかになるでしょう。
テーマ『芽吹きのとき』
3/2/2025, 8:08:27 AM