糸井

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ある日私は落っこちた。多分迷路のど真ん中に。作者は性格の悪いこの私、だから出口があるかすら怪しい。

「理不尽だなぁ」

何がって、誰のせいかって、勿論自分なんだけど。とことん私に厳しくて当たり強くて手酷いのはなんでよ。いい加減許してくれれば良いのに。

はぁ、と大きくため息をついて。ひとまず周りを見回す。辺りを取り囲む壁の高さは大人の男性三人分くらい。辛うじてある道の先にも壁ばかりで。しかも灰色の壁に白い床、空は絵の具を混ぜたような黒色。そんな空間に浮いた妙な明るさにも気が狂いそうだ。

「ま、取り敢えず進んでみるしか無いよね」

壁の隙間を縫っていくと、床の見えない棘が裸足に刺さって痛い。かと思えば雲みたいなふんわりと沈む床もあって体力が削られていく。おまけに進む事に意味があるかもわからないのだから嫌になる。

そんな事を繰り返していると視界がぼやけて滲んで、赤が視界に広がっていく。綺麗な赤じゃなくて黒く濁った赤。痛みを感じてた足元からと視界の端から。あぁどうしよう。どんどん痛くなるし、広がっていくのを止めようとしたって徒労に終わる。寧ろ拍車をかけてしまう。

目に入る全てが赤に染め上げられて、
「助けて」
なんて言葉を空に放って目を閉じた。


ピロンッ
…?通知の音、
ハッと起きて携帯を手に取る。

「どうしたの?」


『心の迷路』

11/13/2025, 8:45:37 AM