仮名K

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ベッドに痩せた男が横たわり、女がベッドの横にイスを持ってきてそこに腰かけている。ベッドの横にあるテーブルには今にも溶け崩れそうな蝋燭があり、炎が煌々と燃えていた。
「…その蝋燭の炎が消えたとき、俺は死ぬだろう。もし消えたら…」
男は、枯れ枝のような指で戸棚を指差した。
「あの中に…しばらく働かなくてもいいくらいの金を入れた袋を隠している…持っていけ、お前には…随分と世話をかけた…」
女は首を振る。何か言おうと口を開けるが、顔を歪ませまた口を閉じた。それと同時に、蝋燭の溶けた蝋が涙のようにポタリとテーブルに落ちた。
「…気にするな。…お前には好きな男がいたのに、俺が…縛ってしまった…」
男は呻くと、静かになった。まだ蝋燭の炎は消えていない、ただ眠っただけのようだ。女は男の寝顔を見、ベッドに突っ伏すと目を閉じた。

4/11/2024, 11:25:04 AM