霧雨

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【突然の別れ】
私はラギーさんの話に、黙って耳を傾けていました。
いつも元気で、自由なイメージを持つラギーさんにも、愛する人がいて……今でもその人を大切に思っている。
放火事件……それは、二人にとって、あまりにも突然な別れだったと思います。
私は、何も言うことができませんでした。
「……ね?思った通りの恋バナじゃなかったでしょ?」
ラギーさんは、当時を思い出したのか、空のように澄んだ瞳を、少し潤ませて言いました。
「確かに、思ってたのより重かったよ」
私は、彼女の目を見ずに言いました。
「ちょっとぉ!自分でねだっといて───」
「でも、」
いつもの口調で言いかけるラギーさんに割り込んで、私は言いました。
「ラギーさんの口から、ラギーさんたちの大切な話が聞けて、本当によかった」
彼女は、一瞬キョトンとした顔で私を見つめました。そして、
「変なのー」
と少し頬を赤らめました。言った私も、何だかキザっぽいセリフが恥ずかしくて、頬が熱くなりました。
でも、私はラギーさんとの仲が深まったようで、嬉しく思っていました。
「ねえ、あたしだけ話すのはやっぱフェアじゃないよ!君も何か話して!」
ラギーさんは、私にそう詰め寄ります。
「うーん、わ、分かったよ……でも、直ぐには思いつかないし、そろそろ時間も時間だから、明日でもいい?」
「まあ……いいけど。絶対忘れないでよね!あと、考える時間があるんだから、面白い話してね!」
そう言うと、彼女は立ち上がって歩き出しました。
「分かったよー、じゃあね」
「はいはい、また明日〜」
そうして、その日は終わったのです。
私は、ラギーさんの話を聞けて、本当によかったです。
彼女と話した時間は、私にとって、かけがえのない宝物になりました。
でも、そんな彼女とも、お別れする時が来ることを、私は考えていませんでした。

5/19/2024, 1:19:00 PM