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「行かないで」
僕はそう言ったときにはもう手遅れだった。
君はもう僕の手の届くところにはいない。
きっと、彼自身の人生を歩んでいることだろう。
それが、何より腹立たしくて、許せなかった。
僕は君のせいでこんなにも苦しんでいるというのに、当の君は何も知らずのんきに過ごしている。
君のことが憎い。この世の何よりも嫌いだ。
それと同時に、やはり君のことが好きだった。
愛していた。
尊敬していた。
君さえいれば、生きられると思った。
本当は知っている。これは僕の逆恨みだってことを。
こんな僕から逃げてくれてよかった。
きっと、僕なんていない方がいいんだろう。
さぁ、さっさと僕のことなんか忘れて、どこかへ行ってくれ。
もういいんだ、僕のことなんて。
また僕の口から、強がりが零れた。

10/24/2023, 12:46:09 PM