愛を叫ぶ
あー、うるせぇな。
耳元で騒ぐなよ、ただでさえお前は声がデカいんだ。
赤ん坊の時から夜泣きで散々起こされた。安アパートは壁が薄くて、隣に何回頭下げに行ったか。
お前は泣き虫だったけど、俺だって泣きたかったんだぜ。死んだ母ちゃんに縋りたかったよ。
知らないだろ。
頼むから寝かせてくれ。静かに、よ。
あーもう。ブッサイクな顔しやがって。母ちゃん似の美人が台無しだ。
いや。こうして見ると俺似かもな。
不細工になると親父に似ちまうなんて、知りたくなかったぜ。
だから、泣くなって。
俺に似ちまうだろ。
お前は笑っていれば良いんだから。
俺を、娘を泣かすバカ親にしないでくれよ。
ぎゃあぎゃあ叫ぶな。泣き喚くなよ。
やっと騒がしい毎日から解放されるんだから。
最期ぐらい、静かに寝かせてくれ。
もう、充分だ。
そんなに叫ばなくても、聞こえているっつーの。
ありがとうな。俺の娘で生まれてきてくれて。
だから、もう良いって。
ちゃんと聞こえてるよ。
俺も、愛してる。
5/12/2026, 12:25:57 PM