みなづきさおう

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毛布

もうかれこれ30数年前、わたしは実家を出てひとり暮らしをすることになった。今と違って、なんでもネットで買い揃えられる時代ではなかったため、ひとり暮らしをするにあたってあれこれ自分で買い揃える必要があった。
ある日、母とわたしは実家から少し離れたたまに行くダイエー(大型スーパー)へ行き、寝具を一式買った。その時に買ったピンク色の毛布こそ、長年わたしと人生を共にしている毛布である。
当時の毛布は縁にツルツルとした肌触りの良い生地が縫い付けてあり、わたしは子どもの頃からその生地の肌触りが物凄く好きなのだ。他人が聞けば気持ち悪い話だろうが、その縁の部分を触りながら眠りに落ちるということがかなり長い間、大人になってからもルーティンになっていたほど。
そうやって毎日のように触り続けられてきた毛布は、縁の布はあちこち破れ、かわいいピンク色だった全体の色もかなりみすぼらしくなり、薄汚れてしまった。
だけど、こういうものはなかなか捨てられるものではない。いまだに現役でわたしの羽毛布団の上に掛けられ、日々わたしと共に夜を過ごしている。
子どもたちには「わたしが死んだ時にはこの毛布を棺に入れてね」と冗談めかして話しているが、実は本気である。
いつ実現するかわからない話だけれど、このわたしの一番のお気に入りとは一生を共にするわよ!

2/17/2024, 12:15:02 PM