誰かしら?
「えーと、白の糸に赤の糸、ネジ10本、それからりんご8つと。よし、全部揃ってる!」
団長におつかいを頼まれて、街まで向かった私は目的地にあるマーケットで無事に買い出しを終えた。
品物が全て揃ったことを確認して、トレーラーへと急いだ。ふと後ろから
「ねぇ、あなた○○ちゃん?」
いきなり声をかけられて、振り向くと見知らぬおばさんがいた。○○は私の名前ではない。
「あの、私は○○ではありませんよ?」
「え、○○ちゃんではないの?あの家に暮らしていた家族の子じゃ…」
「すみませんが、私…家族はいませんしこの街には仕事で初めて来たんですよ」
自分とは違う名前で呼ばれたのは違和感しかないし、この街に住んでいた記憶もない。
「…そうなのね。間違えてごめんなさいね」
おばさんはとても悲しそうな顔をしていた。
「いえ、とんでもないです」
失礼しますと告げて、私は走り去った。
なんだか胸がザワザワしている。
「あの人一体誰なのかしら?私に家族はいないって言った時すごく悲しそうな顔をしていたけど…」
もしかして、私の知らない私はこの街に住んでいたのだろうか?
よくわからない感情のまま、私は仲間たちの元へ帰った。
3/3/2025, 8:31:48 AM