私の名前
私が生まれる前の夜、ぽつぽつと落ちていた雨。
その音を聴いた母は、私に「あまおと」を意味する名前をつけた。
私の身の周りでは、それは珍しい名前だった。幼い頃の私は「もっと可愛いくて、他の子にも多い名前が良かった」とよく思っていた。当時の私には、親が名前に込めてくれた想いがよく分からなかったのだ。
しかし、成長していくにつれ、唯一無二のこの名前に愛着が湧き、それに込められた温かい想いも理解できるようになった。そして何より、名前の影響だろうか、今の私の身近な人たちには「明るさ」や「太陽」を想像するような名前が多い。彼らはまさに「雨天」である私を照らし、晴れに導いてくれるような存在だ。単なる偶然かもしれないが、私の名前が違えば、彼らに出会えていなかったかもしれない。
雨は、私にとってとても思い出深い。しとしと降ってくる音を聴いていると、なぜだかとても安心する。もしかしたら、私がお腹の中で聴いた母の鼓動と生まれる前の夜の雨音を重ね、思い出しているのかもしれない。
7/21/2024, 5:32:45 AM