NoName

Open App

わたしが、小学校5年生の時、帯状疱疹(ヘルペス)になった。右肩の辺りだった。
当時は子供がかかるのは珍しいかったし、薬もなかった。

わりと痛みには強いわたしだったけど、昼間より、夜、眠ろうとすると、刺すような痛みが貫き、苦しかった。

鎮痛剤は効かない。

母が心配して、近寄ろうとする気配…
それだけで痛みが増した。

神経にウィルスが付くのか入ったのか、分からないけど、とにかく神経が過敏になればなるほど痛みが増した。

夜になればなるほど、激痛が増した。

母が近寄ってくる…
そう思うだけで痛む。
母が心配している…
そう思うだけで更に痛む。

呻かないように声を上げないように、身悶えするその気配を、母は廊下に座って心を痛めていた。

「近寄らないで!」
「お願い、ちかよらないで!」
母に何度も懇願した。

「痛いならさすろうか……?」
母は、更に更に心配して…

声をかけられるだけで、
痛む…辛い…

歯を食いしばって泣かないようにする。
『イタイ…』と、思うだけで、更に激痛が走った。涙を流すと更に激痛が走る。

寝返りを打とうと、そう思うだけで激痛。



眠れない夜を何日過ごしたか、記憶にないけど、夜が怖かった。

昼間は明るさで神経がいろんなところに向くのか、痛みも鎮まってウトウトできた。


夜が来るのが怖くて、
激痛に耐えなければならない夜が怖くて。

当時、高齢者がかかればモルヒネを使う、と医者が言っていた。

帯状疱疹の免疫力は30年といわれているから、わたしの免疫力は切れていると思う。
今は、ワクチンもあるし薬もあるから、もしかかったとしても軽く済むと思う。

だけど、あの激痛だけは忘れられない。
ワクチンを打てる人は打っておいたほうがいいかもしれない。


わたしはアレルギーあるし、病気としてかかってるからワクチンは打ちたくない。


…………

針山地獄があるとすれば、
あの痛みを遥かに超えるんだと思う。
人間は痛みを快感と勘違いする。

指にほんの少しの棘が刺さっただけでも取ろうと頑張るのに、『針山地獄さえ耐える』と、思ってる人が居るとしたら…


「あんた、あまちゃんだね」
って、言ってやる。
言ってやるだけでは済まないかもしれない。

本当の地獄ってのは、
自分が愛してやまない者が、
自分の目の前で苦しみもがくことだ。
そのとき、自分は何もできない。
泣くことも声をかける事できない。
そばに寄り添うこともできない。
離れる事もできない。

何もできない、

あの時の
わたしの母のように。


2025/02/11
ココロ、
今日はなんだか苛ついてる。



2/11/2025, 11:33:33 AM