花粉症

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「……さん」
ずっと言えなかった彼の名前を口の中で転がす。声は雨の音にかき消されてしまったけど、きっと彼にはこの声が届いているから。自身のことを思ってくれているのだろうと考えれば、そんなことあるわけ無い、自分を好いているなんて到底思えない。そう思ってしまう。自己肯定感が低いからだろう、良くも悪くも勢いに任せて告白する人間ではなくて良かったと思った。
「傘忘れちゃいました。⋯てへ」
もうすぐ台風の時期になりそう、と朝の天気予報で聞いた言葉の通り今日は雨で。母に折りたたみを持たされたけれど、忘れたふりをして貴方に声をかける。しょうがないなと傘を貸してくれるかな。もしかしたら最寄りまで入れてくれるかな。期待はそこそこにして精一杯可愛がってみた。

5/26/2025, 3:59:29 AM