にのい

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 「理想のあなた」

歌を歌った。それはもう素敵な歌を。

小学校でも中学校でも、みんなに歌を披露して欲しいって言われたりとか、家の近くの老人ホームに歌いに行ったりもしたんだから。
本当に歌が上手やねって、みーんな褒めてくれたわ。

だからわたし勘違いしちゃったの。
自分は特別なんだって。
自分には才能があるんだって。
みんな、わたしが子どもだから優しくしてくれてたのね。
年を重ねて嫌でも分かったわ。あんまり歌の才能は無いって。

有名で、売れてるあの子が羨ましい。
もうちょっと才能があれば、あの子みたいになれたのかしら。
きっと無理ね...だってわたし、あの子ほど愛される自信ないもの。

今度、友達の結婚式で歌うことになってるの。ずっと昔の友達。結婚するんだって。わたしがあがいてる間にちゃっかりやることやってたのね。
わたしはやっと子どもを抜けられた所だっていうのに。
なによ。人より少し気付くのが遅かっただけじゃない。何にだってきっとなれるわ。

こんなわたしの話を聞いてくれた、あなたのような優しい人にだって。

5/20/2026, 2:12:27 PM