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曇り



今日の天気の当番はぼく、そう雲だ。


いつも太陽さんと雨さんとぼくで、天気を回している。


決め方は日による。


ちなみに今日は、ぼくがじゃんけんで負けたんだ。


ぼけーっとまわりを見渡していると、


お母さんと手を繋いで歩くひとりの女の子を見つけた。


どうやら、悲しそうな表情をしている。


『 ねぇ、あの子どうしたのかな 』


ぼくが2人に聞くと、


『 とにかく笑顔にさせようぜ 』


太陽さんが、ここはおれの出番だと言わんばかりに


輝きを放つための準備体操をはじめた。


それを見た雨さんが、今日はわたしの出る幕はないなと


ひとみを閉じようとした瞬間、


ぼくは気付いたんだ。


『 あの子が持ってる傘、とても素敵だね 』


閉じていても分かるくらい、


とてもカラフルな色の傘だった。


まだ買って間もないのだろうか。ピカピカだ。


『 もしかしたら、


あの傘を使ってみたいんじゃないかしら 』


その雨さんの言葉で、


ぼくはいいことを思いついてしまった。


『 ねぇねぇ、今からさ、、。 』


太陽さんと雨さんに話すと


ぼくたちは顔を合わせて微笑んだ。







『 ねぇ、おかあさん。この傘いつ使えるのかな』


今日はくもりだから、また今度かなぁと


おかあさんは、少しこまったような顔をする。


買ってもらった傘、はじめて使えると思ったのに、、


かなしくてうっすら涙をうかべた、その時、


『 あっ、雨だよ 』


おかあさんの言葉で、ぱっと上を向くと


ぽつぽつと


まるで、涙をそっとぬぐうように


雨が優しく降りそそいだ。


傘をさした姿をおかあさんに見せると


似合ってるよ、と褒めてくれた。


おかあさんが選んでくれた傘は、やっぱりかわいくて


わたしのお気に入りだ。


涙もすっかり消えて、上機嫌で歩いていると


一筋の光が差し込んだ。


雨がやんで、雲が流れて、太陽がでてきたのだ。


『 あ!虹だ!! 』


おかあさん、虹がでてる!と


うれしそうにはしゃぐ女の子と、


その横で優しくほほえむおかあさん。







そんなふたりを、ぼくたちはずっと眺めていた。


『 それにしても、よく思い浮かんだね 』


そういう太陽さんと雨さんに、ぼくは


『 あの傘がカラフルだったから 』


と、一言だけ。




あぁ、今日は、じゃんけんに負けてよかったな。


ひとりの女の子を、笑顔にできたのだから。

3/24/2025, 10:27:16 AM