『悪魔執事と黒い猫』二次創作
題名:恋に酔う
ルカスと共に女神の神殿から戻った私は、宿の主人が貸してくれた花瓶に、先程彼から受け取った花束を生けた。
パレスまで持って帰ることは難しいだろうけれど、せめて少しでも長く彼との思い出を留めておきたかった。
花瓶の中、幾分か元気を取り戻したように見える花に顔をそっと近づければ、誘うようにふわりと甘く香る。
そうしていると、一つ一つの花が存外繊細な姿をしていることに気が付いた。
そういえば、艶やかに咲き誇る大きな藤棚を見たことはあったけれど、こんなに近くでまじまじと眺めたことはなかったように思う。
皆を魅了する滝のような優麗な姿と、近づき触れなければ知り得なかった繊細な美しさ。それはどこか彼を思わせた。
「酔わされたかもなぁ」
彼の瞳の色をした指輪をそっと撫で、綺麗にメイクされたシーツの海にぽすりと身を預けた。
6/25/2023, 7:00:12 PM