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『これからも、ずっと』

 あたしの目が覚めるのとほぼ同時刻に、アイオリアが亡骸を抱えてやってきたのを見て、初めは何があったのか理解できなかった。呆然とするあたしにアイオリアが苦渋に満ちた顔をして起こった事を説明して、あたしは全てを理解して、大泣きしてしまった。アイオリアが目の前にいるってのに、恥ずかしいったらありゃしない。
 お前が星矢に負けた後、再び鍛錬を続けながら星矢への恨みを募らせていたのは知っている。そんな気持ちではいつまで経っても聖衣を手に入れることはできないって叱りつけたっけ。
 だけどお前は、その恨みを乗り越えて、星矢のため、アテナのためにその命を散らしたんだね。
 ――いや、そんな事を言うのはお前に失礼か。お前は、あたしのために、あたしの身代わりになったんだろ。あたしを死なせないために。お前はいつでもあたしの事を一番に考えてくれていた。
 でも、あたしが、唯一の弟子で何年も指導してきたお前が死んでも悲しまないような薄情な女だと思うのかい。まったく、最期まで馬鹿な男だね。
 だけど、お前の気持ちは伝わったよ。ありがとう、カシオス。お前はこれからも、ずっと、あたしの自慢の弟子だ。

 あたしは立ち上がる。アイオリアに受けた背中の傷は酷く痛む。これじゃ戦いはおろか、星矢の盾になることだってできやしない。でも、戦えなくても、あたしにもできることはあるはずだ。火時計の火も残り少ない。早く行って星矢の力にならなくては。
 部屋を出る前に、チラリと振り返る。ベッドに静かに眠るカシオスを見て、あたしは決意を新たにする。
 じゃあ行ってくるよ、カシオス。必ず、生きて帰ってくるからね。

4/9/2024, 12:06:04 AM