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新年(オリジナル)(秘密の手紙ときらめく街並みの続編)

除夜の鐘が鳴り始めていた。
僕はふと隣を見る。
半透明の霊になった幼馴染がコタツに入りながら紅白を見ていた。
彼は僕の視線に気がついて、
「どした?」
と聞いてきたので、僕は正直に答えた。
「うん、除夜の鐘とかどう?」
「どうって?」
「成仏とかしたくなっちゃうのかなって」
お茶を飲んでいたとしたら確実に吹いていたであろうリアクションで、彼はコタツ机にめり込んだ。
「俺は煩悩の塊かい!」
「あ、そっか」
僕はお寺の鐘イコール鎮魂だと思ってしまっていたのだが、除夜の鐘は生者の煩悩を清めて新年を迎えるためのものだというのをすっかり忘れていた。
しかし同じ「寺の鐘」なのに、用途で効き目が異なるものだろうか。
でも確かに、時報の鐘で浮遊霊が一斉に成仏するのもおかしいか。
僕が色々考えていると、彼も首をひねって、
「ん?待てよ?除夜の鐘って邪気を祓うみたいな意味もあった気がするな?俺、邪気か??」
「え、嘘、かずくん、具合悪い?」
「いんや、全然」
僕はホッと胸を撫で下ろした。
一方で、彼はニヤリと悪い顔をする。
「あいつは悪の塊みたいなもんだから祓われてたら面白れぇな」
彼の言うあいつとは、霊になった彼を「最期の手紙配達員」にスカウトしてこの世に留め置いた、吸血鬼のような風体の男の事だろう。確かに見た目に悪い側のキャラ味はある。
「そういえば聞いたことなかったけど、十字架とかニンニクとかお線香とか神社とかお祓いとか駄目なのある?危ないのあったら言ってよ?」
「吸血鬼じゃないんだから」
彼は吹き出して、
「わかってるって。ニンニクはむしろ好物だから避けんなよ」
「了解」
僕はにっこり微笑んだ。
紅白が終わり、別番組にチャンネルを切り替えているうちに、年が明けた。
「あ、かずくん、明けまして…」
そこまで言って、ハタと気づく。
亡くなっている本人とはいえ、喪中というやつではなかろうか。
その際の新年の挨拶はどうするんだっけ。
僕の焦りを察知したのか、彼はニッと笑って、
「今年もよろしくな」
と助けてくれた。
「うん、よろしく」
僕は笑顔で答えた。

新年、楽しい一年にしよう。

1/1/2026, 12:30:33 PM