家の近くの自動販売機で
コーンポタージュ缶を買う
両手でコーンポタージュ缶を大事に持って
雪がチラチラ降る町を歩き
小さな赤い電車に乗って隣町まで行く
バスに乗り継いでユラユラ揺られ
君の町まで
君の家の玄関に着く
インターホンを鳴らして君の名前を呼ぶと
中から部屋着姿の君が出てくる
コーンポタージュ缶を手渡して
目的をとりあえず達成した私は
もと来た道を戻って家路に着く
昨日はホットコーヒーを買って持っていった
この間はおしるこを買って持っていった
その更に前はカフェオレを
その前、その前、その前…
君の家に着いた時
手に持った缶ジュースはいつも冷えてしまっている
そのまま渡すのが恥ずかしくて
玄関に缶ジュースを置いたらそのまま帰ってしまう事もある
缶ジュースは誰のものか分からなくなり、その時も当たり前のように冷えている
君の家の前には、私がいつも使うのと少しだけ商品ラインナップが違う自動販売機がある
ここで缶ジュースを買えば、君に暖かい飲み物を渡せると思う
でも、そいつは私が使えない自動販売機だから
今日も私は、いつもの自動販売機で缶ジュースを買って
君の家に行く
「−あなたに届けたい−」
1/31/2023, 8:38:50 AM