『大事にしたい』
これは僕の宝物。
幼い頃に兄さんからもらったこのペンダントは、常に僕の首に掛けてある。兄さんが、覚えていないけどきっと母さんの形見だろうと言って僕に渡してくれたものだ。僕は母さんの顔を知らないので正直そこまでの思い入れはないけど、でも兄さんが僕のこと、そして母さんのことを大事に思っていることが分かって嬉しかった。
このペンダントは、不思議なことに何があっても必ず僕の手元に戻ってきた。
小さい時にいつも僕のことをいじめていた子たちがこのペンダントを取っていったけど、すぐに返しに来て謝ってくれた。いつもは絶対謝ったりなんかしないのに。それから、うっかりペンダントを川に落として流されてしまった時も、翌日、近所の野良犬がペンダントを咥えて僕のところに来てくれた。ペンダントを失って泣いていた僕はとても嬉しかった。まるで、ペンダント自身が僕のことを持ち主だと認めているようだった――この考え方は少しファンタジーかな。
でも、ペンダントには『YOURS EVER』――永遠にあなたのもの、という文字が彫られている。だから、その考えもあながち間違っていないのかもしれない。そう思うと、尚更大事にしたいと思う気持ちが強くなった。もしかしたら、母さんが天国から僕と兄さんを見守ってくれているのかもしれないから。
僕はペンダントをそっと撫でた。ペンダントがそれに応えて輝いた気がした。
9/21/2023, 12:01:31 AM