雨がしとしとと降り注ぐ。今日は控えめだな、なんて思いながら空を見上げれば、雨水が目に入った。
生まれてこの方、私の周りには雨が降り続けている。太陽に照らされることなど滅多にないわけで。ただまぁ、地域によっては重宝される能力でもあるため、生活には困っていない。一箇所に留まらなければ、であるけれど。
さて、そんな私だが今日は人生の転機となるかもしれない用事が入っている。人に合う約束があるのだ。それも、晴れ男と。どちらの能力が強いのかという話にもなるからなんとなく負けたくない気もするがお天道様の下を歩いてみたい気もする。
と、そのとき。雨の勢いが弱まってきた。もしかして、と思い周りをきょろきょろしてみれば、案の定、こちらに向かってきている男性が一人。
「あの、もしかして……」
私が声をかけたことで男性がにっこらと笑って遮るように口を開いた。
「僕が晴れ男です。貴女が雨女、ですよね。とても綺麗な方だ。」
さらりと言われた口説き文句に顔が赤くなるのを感じる。この体質だ。人に言い寄られる事などなく、耐性がない。
「あ、ありがとうございます。貴方もその……かっこいいですね。」
私も、と思い相手を褒めてみればありがとうございますだなんて余裕そうな笑みを浮かべた。シンプルにイケメンだ。羨ましい。
そこでふと、二人して空を見上げた雲が空を覆っている。晴れてはいないが雨が降っているわけでもない。思わず、顔を見合わせて笑ってしまった。この人となら、うまくやっていけるかもしれない。そう、思ってしまった。
それから私たちは何度も逢瀬を重ね、そして実験を繰り返した。どうやら2人そろうと本来の天気になるらしい。なんとも平和なことだ。それが嬉しくもある。あれから数年後、今、私のお腹には2つの命が宿っている。この子達がどんな人になるか、どんな体質かまだわからない。けれど、私たちならどんな困難も乗り越えていけるような気がしていた。
1/4/2024, 1:27:56 PM