8木ラ1

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「正直さぁ」

彼がいつもの言葉から話し始める。その言葉を口にする時は大体漫画や本の感想。
「っていう展開マジおもろかったわ!」
元気に話す彼の目はいつも嬉しそうだった。後その感想聞くの二回目。

僕は頷きながら最後のサンドイッチを口に放り込む。まぁほとんど話なんて聞いてないんだけどね。
すると彼もジュースを一口飲む。
「あーっ!やっぱ正直このジュースがいっちゃん好きだわ!」
そう笑って言う彼に僕は黙った。そんな僕を見て彼は顔にハテナを浮かべている。
これ、言っていいのかな。まぁいっか。
少し考え込んだが、すぐに決意した僕は口を開いた。
「正直っての嘘でしょ」
その言葉に彼は固まる。静まった空間は気まずくて、言ったことをすぐに後悔した。やっぱ言っちゃまずかったか。傷ついたかも。

彼は驚いた表情をしていたが、すぐに明るい笑顔を作っていた。
「あはは、何言ってんの!」
その笑顔は引きつっていて今にも崩れそうだ。あ、これやばいか。これどっちだろう。

まぁいっかと開き直った僕は気にせず言葉を続ける。
「加藤先輩が好きって言ってた本の展開もジュースも真似してるの、見て分かるよ。そもそもお前本苦手だったし。後そのアクセサリーも……」
淡々と喋り続ける僕の口は、彼の手で遮られた。彼が動いた衝撃でベンチからペットボトルが落ちる。見ると彼の顔は熱く帯びていた。
ちょっと喋りすぎたかもな。そう思っていてもすぐにまぁいっかと自分で許しを得る。

沈黙が続き、やっと口から手を退けられる。すると彼はゆっくりと口を開いた。
「べ、別にいいだろ。
正直…加藤先輩ってかわ、かわいいし…」
手で顔を覆いながら話す彼に僕は笑う。
「その“正直”は本当だね。」
「うるせぇ!!」

6/2/2024, 2:52:32 PM